住居の安全を考えるサムライ

伊藤 正 (28歳)

■キッカケ

イタリア料理店でコックの仕事に携わっていたとき、「手に職をつけて独立したいならアンカー工がいい」と兄に誘われ、26歳の時に転職。

■ターニングポイント

2007年の新潟中越沖地震の後、新潟の現場に行く途中で、倒壊した建物を見たんです。それまではオレがやっていることが、世の中にどう役だっているかなんて、あんまり考えたことはなかったんだげど、オレたちが頑張らないとああなっちゃうんだって、心にぐっときました。

■アンカー工とはこんな仕事だ!

建築物の強度を高めるために、コンクリートにドリルで穴を開け、アンカーボルトという金具を埋め込む。
この一連の作業をするのがアンカー工だ。
阪神・淡路大震災後に法律ができ、大勢が利用する建築物は耐震診断・改修を行うようになった。

■アンカー工が活躍したのは、例えば…

・東名高速高架橋補強工事
・JR総武線の補強工事
・全国の小・中・高・大学の耐震補強工事

年間を通し、主要な高速道路や電車の走行する高架といった、首都圏の交通網の要を補強。
全国のこどもたちが長期休暇に入るころには学校の補強工事を重点的に行い、安全な学生生活を支えている。

ドリルで開けた穴とアンカーの隙間に樹脂を注入して、アンカーをしっかり固定。樹脂はすぐ固まりはじめるので、てきぱきとスピーディな仕事が身についた。
穴が深かったり浅かったりすると、アンカーはまっすぐに打ち込めない。簡単に打っているように見えるが、確かな技術がいる。だからこそ、出来るようになると面白い。

阪神・淡路大震災のとき、被害が集中したのは耐震性の低い建物。その教訓をもとに法律が変わり、耐震補強工事が各地で行われるようになる。そして、現場で日々、汗を流しているのがアンカー工の伊藤。
「ドリルで穴を開けてアンカーを打つ。単純な作業のように見えるけど、コンクリートの中に張りめぐらされている鉄筋にぶつからないように穴を開けるには、けっこう技がいるんです。」

アンカーを打つのは特殊技術。穴を掘る深さをちょっと間違えるだけでも、アンカーをまっすぐ打つことができない。
「正直、ラクしてもうけられると思ってたんですよね。なのに、やってみたら、ドリルは重いし、思うように穴は開けられないし」
でも、周りがいい人ばかりだから続けることに。
「数ヶ月したら急にうまくできるようになって。アンカーがまっすぐ打てると、すっごく気持ちいい。今じゃ楽しんでやってます。」
群馬、千葉、新潟といろいろな地方へ行く。
学校、高速道路、鉄道関連など建築物もいろいろだ。
「オレがやっている仕事が人助けにつながる。ふだんは意識しないけど、人に誇れる仕事ってやっぱり張り合いがありますよ」